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永野裕之のBlog

永野数学塾塾長、永野裕之のBlogです。

【新刊】オーケストラの指揮者をめざす女子高生に「論理力」がもたらした奇跡(実務教育出版)

 

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新刊『オーケストラの指揮者をめざす女子高生に「論理力」がもたらした奇跡』(実務教育出版)が出ます。以下は、出版社がつけてくれた内容紹介です。

なぜ、世界のエリートは
古代ギリシャの数学書『ユークリッド原論』を読んでいるのか?

それは、古来より「論理力」は“数学"によって磨かれてきたからである。

聖書と並ぶ大ベストセラーを使い、
対話形式で楽しく学べるロジカルシンキングの本質!

↑「立ち読み」できます! jitsumu.hondana.jp

目次

  • プロローグ なぜ論理的である必要があるのか?
  • 第1章 論理的であるための基礎
  • 第2章 証明のイロハ
  • 第3章 深い証明
  • 第4章 感性を磨く「論理力」
  • 第5章 「論理力」を深める~新しい視点~

より詳しい目次は下記リンク(PDF)を御覧ください。

f:id:naganomath:20170513052956p:plain『 オ ー ケ ス ト ラ の 指 揮 者 を め ざ す 女 子 高 生 に… 』 目 次(PDF)

見本ページ

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ユークリッドの原論と論理力

Euclid's Elements 1573 Edition

ユークリッドの『原論』という本をご存知でしょうか?

『原論』は紀元前3世紀頃に編纂された最古の数学テキストであると同時に、今日でもなお現役の教科書として世界中で使われている、驚異の大ベストセラーです。聖書を除けば『原論』ほど世界に広く流布し、多く出版されたものは無いでしょう。余談ですが、15世紀にグーテンベルクによって活版印刷が発明された後、初の幾何学図版付きの本として出版されたのもこの『原論』でした。

定義→公理(公準)→命題→定理→証明という『原論』のスタイルは、今日の数学書のスタイルを決定づけただけでなく、すべての分野に通じる論理的思考(logical thinking)の方法そのものです。論理的にものごとを考えていこうとしたら、これから何も引くことはできませんし、またこれ以上に何かを付け加える必要もありません。議論に使う言葉の定義と「これだけは前提として認めることにしましょう」という公理(公準)からスタートし、ブロックを積み上げるようにひとつずつ命題(客観的事実)を証明していくプロセスなくして、論理的な結論は得られないからです。質においても量においてもこの論理的思考の手本が『原論』ほど示されている類書は他に見当たりません。それはつまり、論理力を磨くためには『原論』こそが最良であるということです。

ではなぜ、論理力を磨くための本が特に西洋においてこんなにも多くの人に読まれたのでしょうか? それは、古代ギリシャ文化の伝統を受け継ぐ欧米では古くから論理的思考が尊ばれてきたからです。学校の授業の中でディベートを学ぶのもその表れでしょう。西洋ではセンスやヒラメキよりも、まわりの人間を説得し、対立する相手の主張をも理解する力、すなわち論理力こそがリーダに必要な資質だと考えられています。論理力を磨くための理想的な教本である『原論』がエリートに必須の教養であり続けるのはいわば当然です。

一方の日本はどうでしょうか? 2000年前後に世紀をまたいで出版された『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(1999年ダイヤモンド社)と『ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)』(2001年東洋経済新報社)という2冊のベストセラーをきっかけに、日本でも「ロジカルシンキング*1。という言葉が認知され、論理力の重要性が注目されるようにはなってきました。しかし、欧米に比べるとまだまだ浸透しているとは言えないでしょう。これは日本人が『原論』を読んでこなかったことと無関係ではないだろうと私は考えています。

ユークリッド原論 追補版

ユークリッド原論 追補版

 

本書執筆の経緯と内容について

オーケストラの指揮者をめざす女子高生に「論理力」がもらたした奇跡

「だったら、今からでも遅くないから日本人も『原論』を読めばいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、いかんせん『原論』の表現は独特で難解です。『原論』を読むという伝統を持たない日本人にとっては、これを紐解くことはハードルが高く感じられるでしょう……

常々そんなことを考えていた所に、実務教育出版の佐藤金平さんから、「世界標準のビジネスパーソンに必須の総合的な数学的教養=論理力を身につけてもらう」ために、『原論』の解説をベースにした本を書いてみませんかとご依頼をいただきました。私にとって「渡りに船」であったことは言うまでもありません。

本書の読者層は「本物の論理力を身に付けたい。でも『原論』を読むのは敷居が高い」と考える方々です。どの部分も、数学が苦手な方を念頭に置いて書きました。ハードルができるだけ下がるように工夫しつつ、『原論』のエッセンスは損なわないように留意して書いたつもりです。

本書は、女子高生の優子とクリッド先生の対話形式で進んでいきます。対話形式を選択したのは(読者目線の「優子」の質問が難解な内容を解きほぐしてくれるだろうと期待したからというのもありますが)、『原論』は議論のための数学としての側面を色濃く持っているからです。『原論』が書かれた当時(古代ギリシャ)の数学は、相手を納得させること・論破することが目的でした。そのため『原論』の記述にはいつも仮想の相手の存在が感じられます。『ユークリッド「原論」とは何か』(岩波科学ライブラリー)の中で斎藤憲先生が指摘されている通り、『原論』はモノローグではなく対話(ダイアローグ)なのです。本書の対話形式を通して「議論のための数学」の雰囲気を感じていただければ幸いです。

また、全体を通して優子がプロの指揮者を目指しコンクールに挑戦するというサブストーリーを設けました。これは、ひたすら命題の証明に終始する『原論』に読者を飽きさせないためです。クリッドと優子の会話の中に「余談」をあえてふんだんに盛り込んだのも同じ目的です。

本書は私にとりまして、大きな挑戦であり、それだけに画期的な本に仕上がったと自負しています。このような本を世に出すことができたのは、本書の成立にご尽力いただいたすべての方のおかげです。特に、編集者の佐藤金平さん、装丁のkrran さん、装丁イラストの高橋由季さん、本文デザインのISSHIKI さん、イラストのひらのんささん、校正の長谷川愛美さんにはこの場をお借りして改めて御礼申し上げます。

サブストーリーについて

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本書のサブストーリーに女子高生が指揮者を目指すという物語を選んだ理由をもう少し詳しく書いておきたいと思います。 

私は30代の半ばまで、数学塾の塾長と併せてプロの指揮者としても精力的に活動しておりました(上の写真は、2009年のいわき交響楽団さんとの定期演奏会の時のものです)。

当時はよく「数学塾の塾長と指揮者の二足のわらじを履いて、頭の中が混乱しませんか?」と言われました。でも私の感覚では、数式を読むことと楽譜を読むことはほとんど同じです。

音楽~特に西洋の音楽~には和声(和音の進行)に代表される理論があり、説得力のある演奏をするためには作曲家の築いた理論を読み解く必要があります。このときの頭の働きは数式を読み解くときの頭の働きにそっくりです。

また、理論を理解するだけでは良い演奏はできません。良い演奏家であるためには、瑞々しい感性も同時に必要です。この点においても、音楽と数学はとても良く似ています……と書くと「えっ!? 数学に感性が必要なの?」と思われるかもしれませんね。でも数学は言葉です。言葉としての数式の意味を理解し、その言わんとする深遠なる世界を感知するためには、やはり豊かな感性が必要なのです*2

本書に登場する優子は非常に瑞々しい感性の持ち主であり、音楽的素養も豊かですが、最初は論理的思考をまったく持ち合わせていません。その彼女が論理力を身につけることで、指揮者への階段をトントン拍子に登っていきます。

もちろん、実際はそんなに簡単ではないでしょう。私自身コンクールには幾度となく敗れていますから事が単純でないことは重々承知です。指揮者に限らず何事も、大成するためには様々な能力や運が必要なはずです。

でも逆に、才能や実力があっても論理力が欠けているばっかりに、大きな成功をつかめない方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。筆者としては、本書のサブストーリーを通して、奇跡を起こすために(奇跡とまでは言わなくても実力に相応しい成功をおさめるために)、論理力が大きな武器になることを感じていただきたいと願っています。

《本書前カバー袖より》

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論理力に不安のある方、数学が苦手な方、小手先のテクニックではないロジカルシンキングの本質を学びたい方、是非、本書をお手に取ってみてください。

オーケストラの指揮者をめざす女子高生に「論理力」がもらたした奇跡

オーケストラの指揮者をめざす女子高生に「論理力」がもたらした奇跡

 

 おまけ(追記:2017.5.16)

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これ、クッキーです! 生徒さんにプレゼントしていただきました! 包みを開けた瞬間びっくりしすぎて落としそうになりました(落とさなくてよかった~)。

茅ヶ崎にある「焼菓子工房Sainte-Enfant」さんの作品です。素晴らしい技術力!!

ameblo.jp

 

 

*1:ただし、この2冊のベストセラーにおける「ロジカルシンキング」は主にコミュニケーション能力を高めるためのスキルを指し『原論』が培う論理力とはやや意味合いが異なります。

*2:音楽と数学の共通点については以前STORYS.JPに詳しく書きました