永野裕之のBlog

永野数学塾塾長、永野裕之のBlogです。

住宅ローンの返済回数を計算する式を導く[NPER関数の正体]

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昨日、妻から

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「住宅ローンを繰上げ返済するとどれくらい返済回数が減るかって、すぐに計算できる?」

と質問されました。私としては、

「もちろんできるよ!」

と言いたいところでしたが、(正直に言うと)住宅ローンの返済回数の計算は少々面倒です…(・_・;)

 

住宅ローンの繰り上げ返済については便利なサイトが色々あって、借入元金 、借入期間、金利、繰り上げ返済金額などを打ち込めば、どれくらい期間が短くなって、どれくらい利息分を減らせるかをすぐに教えてくれます。

 

しかし、

「このサイトで分かるよ」

お茶を濁すのは、一応数学を生業にしている身としては情けない。

やはりここは自分の手で立式したいところ。

必要な数学は高校数学で学ぶ数IIの対数と、数Bの等比数列の和です。

 

(注)ちなみに元利均等払いで返済した場合の支払い回数についてはExcelにその名もNPER(Number of PERiods)関数というものがあることが分かりました。これを使えば指定した額に到達するまでに必要な支払い回数が計算できるようです。下に導く式はこのNPER関数の正体でもあります。

⇒ 参考 : ExcelのNPER関数の使い方

住宅ローンの支払回数を計算する

以下の計算では

借り入れ元金:{ \displaystyle A}

毎月の返済額:{ \displaystyle p}

一月あたりの金利複利):{ \displaystyle r}

とします。

1か月後の残高

1か月後には{ \displaystyle p}円を返済するわけですが、1ヶ月の間に元金は利息が付いて{ \displaystyle A(1+r)}円になっています。つまり、借り入れから1ヶ月後の残高は

{ \displaystyle \color{blue}{A(1+r)-p}}[円]

です。

2ヶ月後の残高

次に借り入れから2ヶ月後の残高は、上記の1か月後の残高に利息分を上乗せした額から返済額を差し引いたものになります。つまり

{ \displaystyle \{ \color{blue}{A(1+r)-p}\}(1+r)-p= \color{green}{A(1+r)^2-p(1+r)-p}}[円]

です。

3ヶ月後の残高

同様に3ヶ月後の残高は

{ \displaystyle \{\color{green}{A(1+r)^2-p(1+r)-p}\}(1+r)-p}

{ \displaystyle =A(1+r)^3-p(1+r)^2-p(1+r)-p}[円]

となります。

nヶ月後の残高

これを繰り返すと、{ \displaystyle n}ヶ月後の残高は

{ \displaystyle A(1+r)^n-p(1+r)^{n-1}-p(1+r)^{n-2}-\cdot\cdot\cdot -p(1+r)-p}

{ \displaystyle =A(1+r)^n- \{p+p(1+r)+\cdot\cdot\cdot p(1+r)^{n-2}+p(1+r)^{n-1}\}}[円]…①

です。最後の{ }の中

{ \displaystyle p+p(1+r)+\cdot\cdot\cdot p(1+r)^{n-2}+p(1+r)^{n-1}}

は、初項が{ \displaystyle p}、公比が{ \displaystyle 1+r}、項数{ \displaystyle n}等比数列の和*1になっているので

{ \displaystyle p+p(1+r)+\cdot\cdot\cdot p(1+r)^{n-2}+p(1+r)^{n-1}=p \frac{(1+r)^n-1}{r}}

と計算できます。①式にこれを代入して{ \displaystyle n}ヶ月後の残高を求めると

{ \displaystyle A(1+r)^n- p \frac{(1+r)^n-1}{r}}

支払い回数の計算

支払いが終わるとき、残高は0。このときの{ \displaystyle n}が求める支払い回数です。

{ \displaystyle A(1+r)^n- p \frac{(1+r)^n-1}{r}=0}

{ \displaystyle  \Rightarrow rA(1+r)^n- p(1+r)^n+p=0}

{ \displaystyle  \Rightarrow (rA-p)(1+r)^n=-p}

{ \displaystyle  \Rightarrow (1+r)^n= \frac{-p}{rA-p}}

{ \displaystyle  \Rightarrow (1+r)^n= \frac{p}{p-rA}}

{ \displaystyle  \Rightarrow n \log (1+r)= \log \frac{p}{p-rA}}

{ \displaystyle  \Rightarrow \Large \color{red}{n = \frac { \log \frac{p}{p-rA}}{ \log (1+r)}}}

 

グラフを書いてみる(返済回数曲線)

せっかくなので、上で得られた式の{ \displaystyle n}(支払い回数)を、{ \displaystyle A}(借り入れ元金)の関数とみなして、グラフを書いてみました({ \displaystyle p=}毎月の支払額は{ \displaystyle 20}[万円]、{ \displaystyle 12 \times r=}年利は{ \displaystyle 3}%にしています)。

 

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私は勝手にこれを「返済回数曲線」と名づけました(`・ω・´)ゞ

一つ特徴的なのは、借り入れ元金が3000~4000万円のあたりは曲線がほぼ直線で近似できそうだということです。これは、元金(残高)が3000~4000万円の場合

繰上げ返済金額(=元金の減少分)と返済回数の減少分はほぼ比例する

ことを意味します。

実際、元金(残高)が4000万円の場合に上の計算式で計算すると

100万円を繰上げ返済→返済回数は10回減

300万円を繰上げ返済→返済回数は29回減

500万円を繰上げ返済→返済回数は47回減

となります(繰上げ返済額が大きくなると比例関係がやや崩れますが…)

 

「だからどうした!(#・∀・)」

と言われてしまえばそれまでですが、個人的にはブログを書く動機にはなるくらいのトリビアでした!

 

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